研究成果 ファイナンスにおけるサステナビリティリスクの定量モデルを新たに提案-本モデルの実務への応用によって、サステナビリティ資産の価値評価およびリスク管理の精緻化が期待される-
ESG指数などサステナビリティ資産に関する既存のファイナンス研究では、主に投資パフォーマンスや分散効果など資産全体のリスクに力点が置かれている。資産全体のリスクから環境リスクの分離を行ったカーボンリスクやグリーンボンドプレミアムの研究でも、環境にフォーカスしており、サステナビリティリスク(Srisk)の特徴を浮き彫りとはしていない。
このたび金村 宗准教授は、既存の研究に裏打ちされた一般的なサステナビリティの概念をファイナンスに適用することで、サステナビリティ資産と従来の資産との価格差によって定義され、平均回帰性、循環性、株式市場リスクへの分散効果によって特徴づけられるSriskの新たな定量的金融モデルを提案しました。ESG指数(MSCI World ESG Leaders、S&P 500 ESG、 STOXX Global ESG Leaders)についてモデルパラメーターを推定した結果、Sriskについて平均回帰性、循環性、株式市場リスクへの分散効果という3つの特徴を確認するとともに、株価指数に対するESG指数の期待リターンの収束を実証し、その結果、ペアーズ・トレーディングにおけるリターンの確保が実現可能であることを示しました。これらの研究成果が今後実務において、価値評価やリスク管理の観点から更なるESG投資・サステナブル投資を後押しすることが期待されます。
本研究成果は2025年1月31日に、A quantitative model of sustainability risk in financeと題する論文として国際学術誌「Journal of Commodity Markets誌(エルゼビア社:JCM)」に掲載されました。JCMはECONOMICS分野のTop15%ジャーナルです。
https://doi.org/10.1016/j.jcomm.2025.100457